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岡Bのお役立ちブログ:エアフィルタの役割とメンテナンス基礎ガイド

NEW 岡Bブログ

    最近は後輩や社長など、キャラクターが増えてきて押され気味ですっかりご無沙汰の岡Bです。

    今回はエアフィルターについてです。
    過去、私が何度も繰り返しお伝えしてきた、長寿命のための定期点検の重要性。
    ここにおいてのエアー関連の点検について詳しくご説明したいと思います。
    がしかし!私一人の知識では心もとないので、今回は強力助っ人を呼びました。
    知る人ぞ知る、トーコー設計部の天才肌『あっちゃん』。彼と一緒にお届けします。
    いつもの岡Bブログとは一味違う、本格的な技術系ブログですので、ご興味のある方は熟読いただけたら幸いです。

    さて、ここからは私がご説明させていただきます。
    工場設備や自動機の空圧システムに欠かせない「エアフィルタ」。
    しかし、その重要性や正しいメンテナンス方法を知らないまま使われているケースも多く、結果として機器の故障やエアトラブルの原因になっていることも珍しくありません。

    この記事では、エアフィルタの基礎知識から日常点検のポイント、フィルタが詰まったときに起こるトラブル例まで、実際の現場で「今すぐ使える」視点でまとめています。

    1. エアフィルタの役割とは?

    工場や製造ラインで使われるエアシリンダや電磁弁などのエア機器は、圧縮空気(コンプレッサーエア)を動力源としています。
    ただし、その空気は“きれいな空気”とは限りません。
    実際にはさまざまなゴミや水分、油分
    が混ざっており、これらがトラブルの原因になることがあります。


    圧縮空気にはどんなゴミが混ざっているの?

    一見見えない圧縮空気にも、実際には以下のような不純物が混入していることが多くあります:

    • コンプレッサーからのオイルミスト
       給油式のコンプレッサーでは、潤滑油が微量に混ざりこみます。
    • 圧縮空気中の水分
       空気を圧縮すると温度が上がり、水蒸気の含有量も増加します。その後、空気が冷却される過程で飽和水蒸気量を超えると、水蒸気が凝縮して水分(ドレン)となり、配管やタンク内にたまります。
      また、水分の発生源はコンプレッサーだけでなく、その後のレシーバータンクや工場内の配管内壁でも結露が起きやすく、ここからもドレンが発生します。
    • 配管やタンク内部からのサビ・スケール
       鉄製配管やエアタンクの内側が湿気で錆びて、その粉が空気とともに流れてきます。
    • シールテープや切り粉などの異物
       配管や継手の施工時に使われた材料が、剥がれて流れ込むケースも少なくありません。

    これらの異物が混じったエアをそのまま流すと、以下のような不具合が発生する恐れがあります:

    • 電磁弁の動作不良(異物の噛み込みやシール不良)
    • シリンダの動作不良や寿命短縮(ゴミや油分によるシールの摩耗)
    • エア機器の詰まりやエア漏れ → 設備の停止や製品品質への影響
    • エアブロー箇所からの水分や油分の噴出 → 製品汚染・誤作動・作業者への飛散トラブル

    エアフィルタの役割とは?

    こうした不純物を取り除くために、エア供給ラインに取り付けるのが「エアフィルタ」です。
    エアフィルタには、以下の3つの大きな役割があります:

    ① 固形異物の除去(ダストやサビ粉など)

    塵やサビ粉などの異物をフィルタ内部でキャッチし、機器内部への侵入を防ぎます。

    ② 水分(ドレン)の分離

    空気中の水分をサイクロン構造などで遠心分離し、カップ内に溜めて排出します。

    ③ オイルミストや微細な汚れの除去(高性能フィルタの場合)

    高精度なフィルタでは、0.01μm以下の微粒子やオイルミストも除去できます。
    特に塗装や食品、医薬分野などでは重要なポイントです。


    トラブルが起きてから気づく前に

    エアフィルタは目立たない存在ですが、実はエア機器全体の“最初の守り”ともいえる重要部品です。

    「シリンダの動きがおかしい」「ソレノイドバルブの反応が悪い」と感じたら、まずはサイレンサやエアフィルタの状態を確認してみることをおすすめします。
    現場では、「動作不良」→「バルブ交換」→「サイレンサが汚れていた」→「実はフィルタ詰まりだった」という流れで原因にたどり着くことが多くあります。

    また、圧力降下はゆっくり進行するため気づきにくく、ついレギュレータの設定圧を上げて対応してしまうことも。
    その間にも、フィルタをすり抜けた異物や水分・油分が2次側に回り込んでしまうと、完全な除去は非常に困難です。
    配管内での圧縮空気の流れは複雑で、異物がどこに滞留したか分からず、いつ・どこから再び噴き出すか予測できません。

    そうなる前に、定期的な点検と早めのエレメント交換を心がけることが、設備全体を守る第一歩です。


    2. フィルタの種類と特徴

    エアラインで使用されるフィルタには、目的や精度によっていくつかの種類があります。
    それぞれの役割を理解し、工程に合ったフィルタを選定することが、安定した機器運用とトラブル防止につながります。


    主なフィルタの種類

    ① メインフィルタ(5μm程度)

    最も多くのエア機器に使われる、標準的なろ過フィルタです。
    エア中の粉塵・錆・塵などの異物を除去し、シリンダやソレノイドバルブ、エアツールなどのトラブルを未然に防ぎます。
    現場ではこのフィルタが「実質的な主役」=メインフィルタとして扱われることが多く、一次側や分岐ごとの入り口などに設置されます。

    • ろ過精度:一般的に5μm前後
    • 特徴:コストが安く、メンテナンスも比較的容易
    • 除去できる異物:粉塵、錆、塵などの比較的粗い固形異物

    🔧 フィルタレギュレータについて(追記)

    多くの現場では、メインフィルタとしてフィルタレギュレータ(Filter Regulator)を使用しているケースもあります。
    これは、フィルタ機能(異物除去)とレギュレータ機能(圧力調整)を一体化したもので、省スペースかつ配管も簡略化できるメリットがあります。

    • フィルタ精度:5μm程度(標準タイプ)
    • 圧力調整範囲:0.05〜0.85MPaなど(モデルにより異なる)
    • 一体型のため、レギュレータとフィルタの別体設置が不要

    ② ミストセパレータ(高性能フィルタ、1μm以下)

    より高い清浄度が求められる工程では、オイルミストや微細な水分まで除去できるフィルタが必要です。
    ミストセパレータはその名のとおり、空気中のミスト状の不純物を分離・除去する高精度タイプです。

    • ろ過精度:1μm〜0.01μm
    • 特徴:ミスト除去率が高く、特にオイル対策に有効
    • 除去できる異物:油ミスト、微細な水滴、微粒子

    ③ 活性炭フィルタ(脱臭・ガス除去用)

    活性炭素材を使用し、エア中に含まれる臭気成分や極微量のオイル成分を吸着除去します。
    一般的には最終段のクリーンアップ用として使用され、塗装工程や食品・医療系のエアブローなど、空気の清浄度が極めて重要な場面で使用されます。

    • ろ過精度:0.01μm以下の微粒子(+臭気成分の吸着)
    • 特徴:高価・寿命が短め(活性炭の吸着容量に依存)
    • 除去できる異物:臭気、極微量のオイルミスト、揮発性有機化合物(VOC)

    現場では、「プレフィルタ」と「メインフィルタ」という呼び分けが使われることがあります。
    これは製品の種類名ではなく、ろ過精度や設置位置・役割による通称です。

    呼び方ろ過精度の目安主な役割設置位置
    プレフィルタ粗め(10μm以上)〜5μm程度大きなゴミ・サビの除去、後段の保護エアラインの一次側・分岐前
    メインフィルタ工程に応じた精度(5μm〜0.01μm)微細な異物やミストの除去工程ごと・機器直前

    プレフィルタは、メインフィルタの負担を軽減したり、寿命を延ばしたりするための「前処理」的な役割を担います。
    一方、メインフィルタは、その工程で求められる清浄度を満たすための中心的なフィルタです。
    なお、「メインフィルタ」とは製品名ではなく、その工程にとっての“主フィルタ”という意味合いで使われることが多い点にご注意ください。


    エアフィルタの構成例

    • 最初に大きなゴミ・サビを除去(プレフィルタ)
    • 次に標準的な異物を除去(メインフィルタ)
    • 必要に応じてミスト・臭気も除去(高性能フィルタ)

    フィルタ選定の注意点

    • ろ過精度が高いほど圧力損失も大きくなるため、必要以上の高精度は逆効果になる場合があります。
    • フィルタは設置後の流量や圧力低下にも影響するため、必ず使用条件に合った仕様を選定することが重要です。

     

    3. エアフィルタの点検・メンテナンス方法

     エアフィルタは、取り付けたら終わりではありません。
    定期的な点検や清掃、そして適切なタイミングでのエレメント交換を行うことで、
    フィルタ本来の性能を維持し、エアライン全体のトラブルを防ぐことができます。


    1. 日常点検(目視確認・排水)

    視認できるポイントのチェック

    以下のような点を、日々の作業中に目視で確認することをおすすめします。

    • ドレン(水)のたまり具合
       透明カップタイプのフィルタであれば、外から水のたまり具合が確認できます。水が溜まっていたら、手動で排水するか、オートドレンの動作を確認しましょう。
    • フィルタカップ内のゴミ・汚れの沈着
       異物の混入状況によって、カップ底部に粉塵や錆などが沈着することがあります。溜まりすぎるとフィルタの性能が低下するため、汚れが目立つようであれば清掃や交換を検討します。
    • 圧力計の指示異常(レギュレータ一体型の場合)
       通常の運転圧と比べて明らかに低い/高い場合は、目詰まりやバルブ不良が疑われます。
    • 目詰まりチェッカーや差圧計の確認
       フィルタによっては、目詰まりの程度を示すチェッカーや差圧計が装備されているものがあります。インジケーターが交換基準を示していないか、定期的に確認してください(詳しくは製品の取扱説明書を参照)。

    ドレンの排出

    フィルタ内に水分がたまりすぎると、ろ過性能が著しく低下し、スラッジの原因にもなります。

    • マニュアル排水式:バルブを手動で開放して排水
    • オートドレン式:一定量で自動排出(ただし正常動作しているか確認が必要)

    💡 水分の多い現場では、毎日の排水確認・排出作業が推奨されます。


    よくある注意点:オートドレンの排出口をふさがない!

    現場によっては、オートドレンの排出口にボールバルブやコックを後付けし、常時閉めてしまうケースがあります。
    これは「漏れ防止」のつもりでも、実際には以下のような問題が発生します:

    • ドレンが排出されず、フィルタ内に水が溜まり続ける
    • 水分によるスラッジ発生、ろ過不良
    • エアラインへ水や異物が流入し、バルブや機器の故障を誘発
    • オートドレン本体の故障(排水機構の損傷)

    オートドレンは自動で排水してこそ機能を発揮します。排出口をふさぐ行為は、誤使用として注意喚起が必要です。


    2. 定期点検(分解清掃・内部点検)

    通常の使用環境であれば、3~6か月に一度の清掃・点検が目安です。
    粉塵の多い現場や、オイルミストを多く含む環境では、より短いサイクル(1~3か月)での対応が望ましいです。
    主な点検・清掃項目:

    1. エアを遮断・圧力抜き
    2. フィルタカップ取り外し
    3. エレメントの汚れ・破損確認
    4. 中性洗剤と水で清掃 → よく乾燥させてから再組立
    5. 劣化・目詰まりが激しい場合は、エレメントを交換

    ⚠ 洗浄後は水分が完全に乾いてから再装着してください。乾燥不十分なまま使うと、エアラインに水分が混入します。


    3. エレメントの交換タイミング

    エアフィルタのエレメントは、定期的に交換が必要な消耗品です。

    🔁 交換の目安:

    • 使用開始から2年(製品によっては1年)
    • フィルタ前後の圧力差が0.1MPa以上になった場合

    💡 製品によっては「目詰まりチェッカー」や「差圧計」が内蔵されているタイプもあります。
    インジケーターが赤色に変化したり、差圧値がしきい値を超えている場合は、交換タイミングのサインです
    詳細は各製品の取扱説明書を参照してください。


    📉 異常兆候から交換を見抜く

    フィルタが目詰まりや劣化を起こしている場合、装置側の状態に変化が出ることがあります。

    装置の症状想定される原因
    圧力が下がり続けるフィルタの目詰まり(流量不足)
    ソレノイドバルブが頻繁に故障する異物混入・水分混入
    2次側にドレンやミストが混入ろ過不良、フィルタ劣化
    オートドレンが吹きっぱなしになるフィルタ内部の異常、水分過多

    4. 点検履歴の管理も重要

    エアフィルタの状態管理には、点検記録の蓄積が大切です。

    • 点検日、交換日、作業者の記録
    • エレメントの型番、交換サイクルの明記
    • 不具合が発生した場合の履歴共有

    定期点検を「人任せ」にせず、誰が見ても分かる形で履歴を残すことで、属人化防止・再発防止にもつながります。

    4. フィルタが詰まるとどうなるか?

    エアフィルタは、目に見えない空気中の異物を捕集してくれる「門番」のような存在です。
    しかし、その門番がゴミや水分で詰まってしまうと、エアライン全体にさまざまな悪影響が広がります。


    1. 圧力が下がる(流量不足)

    フィルタが詰まると、空気の通り道が狭くなり、通過できる空気の量が減少します。
    これにより、装置の2次側(フィルタの下流)ではエア圧が下がり、動作不良や停止を引き起こします。

    よくある現象:

    • シリンダーの動きが遅い、止まる
    • ソレノイドバルブが切り替わらない
    • エアブローの勢いが弱い

    2. フィルタの「目詰まり」による濾過不良

    フィルタが目詰まりすると、空気の通り道がふさがれ、十分な流量が確保できなくなります。
    その結果、装置の動作不良(圧力不足・動作遅れなど)を引き起こすほか、フィルタの性能が限界を超えた場合、水分・ゴミ・オイルミストなどが完全に除去されず、わずかに2次側へ漏れ出してしまうこともあります。

    また、目詰まりした状態で無理に高い流量を流そうとすると、フィルタの破損やシール部からの漏れが発生するリスクもあります。

    結果として起こる問題:

    • 下流のエア機器にゴミが詰まる
    • シール・バルブが早期摩耗・破損
    • エアシリンダーや流体制御機器のトラブル頻発

    3. ドレン水の滞留・スラッジ化

    水分を含んだドレンが排出されずにたまり続けると、スラッジ(ヘドロ状の沈殿物)となり、フィルタの性能を著しく低下させます。
    さらに、このスラッジがオートドレンの排出経路を物理的にふさいでしまうこともあります。


    4. 修理やトラブル対応の手間が激増

    フィルタの詰まりに気づかず使い続けると、フィルタ以外の部品まで壊してしまうことがあります。

    • 「バルブがよく壊れる」→ 原因は汚れたエアだった
    • 「機械の動きが不安定」→ 実はフィルタが詰まってた

    🧠 「機械の故障と思ってバルブを何度も交換していたら、原因はエアフィルタだった」
    こうしたケースは実際によくあるトラブルです。


    まとめ

    フィルタの詰まりを放置すると、単なる流量不足にとどまらず、装置の寿命を縮めたり、トラブルの連鎖を引き起こす原因になります。
    目詰まりは見えにくく、気づきにくいですが、「エア機器の調子がおかしい」と感じたら、まずエア供給源の状態確認をする習慣をつけましょう。

    エアフィルタは「トラブルを防ぐ第一防衛線」

    エア機器が安定して動作するかどうかは、「クリーンなエア」を安定供給できるかどうかにかかっています。
    そのために最も重要な役割を果たすのがエアフィルタです。

    点検やエレメント交換といったちょっとした手間を惜しまないことで、
    装置全体の寿命が延び、不要な故障やトラブルを未然に防ぐことができます。

    「いつもの点検項目」に、ぜひエアフィルタの状態も加えてみてください。